歯ならびがデコボコしている(叢生そうせい)

Last updated Nov. 10th 2020

    患者さん・保護者の方へ

    • 上顎(じょうがく)と下顎(かがく)それぞれの歯の大きさと歯列の大きさや上下のバランスを評価します。その結果から、いつどのようにして歯列を拡大するか抜歯するかの方針を決めます。また、慢性鼻炎や口呼吸によっても顎(あご)の成長は影響されますし、猫背などの姿勢でも歯列が狭くなることがあります。したがって、矯正歯科では症状の程度やその原因、成長段階に配慮した治療方法を選択する必要があります。
    • 一般に慢性鼻炎があると上顎の歯列が狭くなって前歯がデコボコしますが、骨格には余裕があるかを検査・診断します。その結果、上顎歯列を拡大して歯を抜かずに整列できることもあります。歯列を拡大するというのは、たとえば、上顎歯列をの左右に拡大して前方の余裕を作ったり、ヘッドギアで上顎の大臼歯を後方移動したりすることで側方に隙間を作ることです。しかし、歯が大きくて顎骨との大きさにバランスが悪い場合には、残念ながら歯を抜いたり、歯を少しだけ削ることも必要かもしれません。
    • また、虫歯で乳歯が早く抜け落ちると隣の歯が寄ってきてあとからはえてくる永久歯用の隙間が無くなることがあります。そんなときには早めに本来の位置に戻しておかないと、埋まってしまったり横から顔を出したりすることがあります。
    • なお、骨格的な問題を改善するためには手術する必要があるかもしれません。この時には九州大学病院、福岡歯科大学医科歯科総合病院などに紹介します。
    • 矯正治療が終わっても、戻ることがありますので保定装置を継続する必要があります。是非、治療後には長期に定期検診に来ていただき、併せて定期的な検査・評価をお勧めします。
      • 矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について
        •  最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間1、2週間で慣れることが多いです。
        •  歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
        •  装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
        •  治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
        •  歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
        •  ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
        •  ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
        •  治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
        •  治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
        •  様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
        •  歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
        •  矯正装置を誤飲する可能性があります。
        •  装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
        •  装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
        •  装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
        •  あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
        •  治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
        •  矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。

      • この患者さんは慢性鼻炎のために歯列が狭くて前歯がデコボコしていましたが、骨格には余裕があることが検査・診断できましたので、上顎歯列を拡大して歯を抜かずに整列できました。下段には上顎歯列の図ですが、きれいな形に整いました。
        主訴:前歯が不揃い,診断:狭窄歯列,開始年齢:11歳,治療期間:39か月,装置:舌側弧線装置;ブラケット装置,非抜歯,治療費:61万円(当時)
      • 上顎の4番目の歯(第1小臼歯)を抜いて犬歯を後方移動すると隠れていた2番目の歯(側切歯)が見えてきました。下顎も第1小臼歯を抜いて整列を進めました。それから徐々に歯ならびをまっすぐに整えることができました。
        主訴:叢生,診断:上顎前突,開始年齢:15歳,治療期間:20か月,装置:ブラケット装置,抜歯部位:上下顎両側第1小臼歯,治療費:60万円(当時)
      • こちらは成人でしたが、上顎歯列を拡大して歯を抜かずに反対咬合が改善できました。
        主訴:受け口,診断:反対咬合,開始年齢:28歳,治療期間:22か月,装置:ブラケット装置,非抜歯,治療費:70万円(当時)

      歯科医の先生方へ

      • セファロ分析や模型分析などで大臼歯の後方に余裕があると判断されたならば、ヘッドギヤによる上顎第1大臼歯の遠心移動が有効です。ヘッドギヤにより十分な空隙が生じるとある程度叢生は徐々に軽快します。その後、永久歯列になってからブラケット装置を用いて整列します。
      • また、狭窄歯列などでは側方に余裕があるなら側方拡大によってもスペースを作ることができます。診断分析の結果、歯列弓を前後や側方に拡大して叢生が改善可能と判断されれば非抜歯にて矯正治療できることも少なくありません。
      • 大きなディスクレパンシーには抜歯が妥当であることは言うまでもありませんが、歯冠削合では歯の近遠心面をを0.5mmぐらいずつ削合するので1歯あたり1mmを確保できます。その結果、数ミリ程度のディスクレパンシーには有効です。
      • 軽度の叢生などでは、早期治療が奏功すれば永久歯列期にはいっての本格的な矯正治療が必要ないこともあります。乳臼歯早期脱落に伴う第一大臼歯の遠心移動では開始時期と治療方法にもよりますが、小臼歯や第二大臼歯の位置ならびに方向についても治療前の配慮すべき事が多くあります。なお、患者の協力度によっても、可撤式か固定式かを選択することもあります。
    骨格や噛み合わせの程度、矯正を始める年齢および協力度によって治療の効果や期間はちがいます。ご相談に来院された時に治療方法や期間、料金について詳しく説明します。
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